おおのじょうの遺跡/御笠の森遺跡 現地説明会
更新日:2019年8月19日
平成14年10月19日(土曜日)に行われた御笠の森遺跡現地説明会には、悪天候にもかかわらずたくさんの考古学ファンが訪れました。
現地説明会の様子
はじめに
御笠の森遺跡は大野城市山田2丁目にある市指定文化財(ししていぶんかざい)「御笠の森」の周辺に広がる遺跡です。
何が見つかったの?(遺構編 いこうへん)
御笠の森遺跡からは、古墳時代(約1500年前)から江戸時代のはじめ頃(約320年前)の遺構がたくさん発見されました。
- 掘立柱建物跡(ほったてばしらたてものあと) 18棟(むね)
- 井戸跡(いどあと) 13基(き)
- 土坑(どこう) 約120基(き)
- 溝跡(みぞあと) 約30条(じょう)
- 柱穴(ちゅうけつ) 1000基以上
もっとも特徴的なのは、戦国時代(せんごくじだい)から江戸時代にかけて使われた幅1.5メートルから5メートルの溝で、「L」字型あるいは「コ」字型に屈曲(くっきょく)しています。これらの溝は、もともと方形に巡っていたと想定できます。
また、溝に囲まれた区画の中には、掘立柱建物(家や倉庫跡)や井戸跡が見つかっていますので、1つの「屋敷地(やしきち)」であったと考えられます。
御笠の森遺跡からは、こうした区画が少なくても4ケ所で見つかっていますので、こうした屋敷地が集合して一つの村を形成していたようです。
- 遺構とは 昔の人が大地に掘り込んだ跡。例えば竪穴住居や井戸の跡。
- 掘立柱建物とは 穴を掘り、そのまま柱を立てた建物。住居や小屋として使っていました。
- 土坑 遺構のうち、水溜め穴やごみ捨て穴などの比較的大きな穴。
井戸をのぞく見学者
何が見つかったの?(遺物編 いぶつへん)
古墳時代から江戸時代(大部分が戦国時代から江戸時代)にかけての遺物がたくさん出土しました。
- 須恵器(すえき)、土師器(はじき)、瓦器(がき)といった国産の土器
- 白磁(はくじ)、青磁(せいじ)といった中国や朝鮮からの輸入陶磁器(ゆにゅうとうじき)
- 伊万里焼(いまりやき)、唐津焼(からつやき)といった国産の陶磁器
- 独楽(こま)、羽子板(はごいた)、下駄(げた)、漆器椀(しっきわん)といった木製品(もくせいひん)
- 火縄銃(ひなわじゅう)の弾(たま)、銅銭(どうせん)、小柄(こづか)といった金属製品(きんぞくせいひん)
- 砥石(といし)、石臼(いしうす)、石鍋(いしなべ)、硯(すずり)、石帯(せきたい)といった石製品(せきせいひん)
中でも、九州内で数例しか発見されていない独楽と羽子板は、特に珍しいものです。こうした遊び道具は、全国的に見ても城下町(じょうかまち)や宿場町(しゅくばまち)で見つかることは時々ありますが、農村部(のうそんぶ)で見つかることはめったにありません。なにかほほえましい光景が目に浮かびます。
また、初期の伊万里焼が多く出土していますが、こうした現象についても一般の農村ではみられないものです。裕福な村であった可能性が高いといえるでしょう。
- 遺物とは土器や石器など昔の人の作った「もの」。
出土遺物
古文書(こもんじょ)から見ると?
江戸時代の古文書『筑前国続風土記(ちくぜんのくにぞくふどき)』によると、山田村について「此村昔は御笠森の辺りにあり、延宝(えんぽう)(1673年から1681年)のころ今の地に移せり」と記載があります。つまり、御笠の森の周辺にあった山田村の集落が、延宝年間のころ移転したという記録です。
実際に遺跡から出土する江戸時代の陶磁器類の年代も、17世紀後半より新しいものは、出土していません。
遺跡の位置や陶磁器の年代から考えて、御笠の森遺跡が移転する前の「山田村」であったことは間違いないといえます。この点については、1999年に実施した8次調査で明らかになっていましたが、今回の調査でさらに証明されたといえるでしょう。
何がわかったの?
御笠の森遺跡の調査の結果、主に次のようなことがわかりました。
- 村の形がわかりました。溝で囲まれた屋敷がいくつか集まって村が作られていたことが明らかになりました。
こうした溝(壕:ほり) をめぐらせた目的として- 土地境を明示するため
- 水害に備えたり、湿気対策のため
- 防御(ぼうぎょ)のため
- どんな暮らしをしていたのか少しわかりました。独楽や羽子板、碁石といった遊具が出土し、農民のほほえましい生活の一コマが見えてきました。また、一般の農村から出土しないような、たくさんの陶磁器や鉄砲の弾が出土していますので、裕福な農民が住んでいたのかもしれません。
- 古文書の記録と遺跡が一致しました。陶磁器の年代と遺跡の位置から、『筑前国続風土記』にある山田村であることがわかりました。
遺物を見学している様子
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