次郎太郎の松(牛頸)
更新日:2018年6月15日
牛頸村に太郎と次郎の兄弟が、両親と一緒に住んでおりました。兄の太郎はよそに行く時に、父親から「天気がよさそうだから草鞋(わらじ)をはいて行け」と言われ、母親には「雨が降るかも知れないから下駄(げた)をはいて行きなさい」と注意されたら、左足に草鞋、右足に下駄をつっかかえて行くような、心の優しい親孝行者でしたが、弟の次郎は「エイッ面倒くさい」と言ってはだしで出かけるような、粗暴で短気者でした。
そんな二人の兄弟が、隣村の一人の娘さんに同時に恋をしてしまいました。娘は心優しい太郎が好きですから、時々二人はそっと会って、楽しく語りあっていました。弟の次郎はますます娘さんに対する思いをつのらせ、どうしても自分の嫁になってくれと、毎日のように言い寄るのです。そして力づくでも嫁にしてしまいそうになりました。困り果ててしまった娘は、「今晩村はずれの地蔵堂で太郎さんと会う約束をしておりますので、あなたのお嫁さんになれるかどうか、明日返事しましょう。」と言ってその場は逃れました。
その晩、次郎はそっと地蔵堂の陰に隠れて待っていると、太郎らしい人影がお堂の前にやって来ました。恋に狂ってしまっている次郎は、(太郎さえ居なければ娘は自分のものになるのだ)と考え、ふいに飛び出して短刀で心臓を一突きにしてしまいました。
その時牛頸山の峰に昇った十三夜の月あかりが、地蔵堂のあたりを照らし出しました。血に染って倒れている人影をよく見ると、太郎と思っていたのは、意外にも娘さんだったのです。
ほんとうに太郎を愛していた娘は、太郎が親孝行であると同時に、弟思いであることも知っていましたが、ひたむきな次郎の要求をこばみかねると共に、その性格も見ぬいていましたので、自ら太郎の姿をして身代わりになったのでした。
自分が好きだった人を手にかけてしまった次郎は、はじめて娘の美しい心情を知り、涙ながらに改心を誓い、太郎と一緒に遺髪(いはつ)を貰い受けて、隣村が見える自宅近くの道端に埋めました。そしてその上に二本の赤松の木を植え、田んぼの往き返りに季節の花を供えて、娘さんの冥福(めいふく)を祈りました。
それから二人は一生嫁をもらわず、仲良く人々のために尽くしたということです。
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