令和5年度施政方針
更新日:2023年02月22日
市議会3月定例会(令和5年2月22日)において、井本市長が令和5年度の施政方針を発表しました。
井本市長 令和5年度施政方針
施政方針とは、市長が新年度の市政運営の基本姿勢および重点施策などについて、考え方を述べるものです。
1.はじめに ~社会情勢~
昨年2月から始まったロシアのウクライナ侵攻は、多くの犠牲者を出し、未だその終わりは見えておりません。このロシアによるウクライナ侵攻は、国際秩序の根幹を脅かすだけではなく、原油や穀物の価格高騰など、世界経済に大きな影響を及ぼしております。
新型コロナウイルス感染症においては、多くの国で行動制限が撤廃されるなど、ウィズコロナ・アフターコロナを見据えた社会経済活動の再開などに舵が切られ始めています。
また、世界規模の気候変動については、昨年11月に開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5℃に抑える「1.5℃目標」の重要性が改めて確認され、各国が目標達成に向けた取組を強化することとなりました。
一方、国内に目を向けますと、岸田政権は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトとした「新しい資本主義」を掲げ、様々な政策が進められています。
政府では、子ども・子育て政策を最重要課題に位置付け、本年4月にはこども家庭庁を新設、出産育児一時金の増額や児童手当などの経済的支援の強化、学童保育や病児保育、産後ケアなどの支援の拡充、働き方改革の推進をその柱として、少子化対策を充実させることを表明いたしました。
また、成長戦略の一環として、デジタル技術の活用により地方の活性化を目指す「デジタル田園都市国家構想」が示され、地域の課題解決とともに、地方から全国へと、ボトムアップでの成長を実現していくこととしております。
さらに、脱炭素社会の実現に向けては、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルの実現を見据え、官民連携の下、脱炭素社会に向けた取組、いわゆる、GX(グリーントランスフォーメーション)への投資として、今後10年間に150兆円を超える投資を実現し、成長の促進とCO2排出抑制・吸収を共に最大化する効果を持つ「成長志向型カーボンプライシング構想」を具体化するとしております。
本市においても、これら社会情勢を踏まえた、ウィズコロナ・アフターコロナへの備えやDX(デジタルトランスフォーメーション)、GX(グリーントランスフォーメーション)、子ども・子育て政策など、国の政策と歩調を合わせた、将来への積極的な投資を進めていくことが求められています。
これらに加え、市政運営においては、市民の生命と財産を守るための災害対策や超高齢社会への対応、まちのにぎわい創出など、直面する課題にも積極的に取り組んでいかなければなりません。
令和5年度は本市にとって市制施行100周年に向けた折り返しのスタートとなる大切な1年となります。新たな行政課題と脚下の課題を踏まえ、市政運営の羅針盤であります「総合計画後期基本計画の策定」や「新たなコミュニティ構想の策定」など、市制施行51年目の新たなスタートを機に、大野城市の未来をデザインし、100年のまちづくりにつながる施策を確実に進めてまいります。
2.市制運営の基本方針
今議会に提案しております新年度予算案について、その基本方針と事業の概要を3つの視点から述べさせていただきます。
(1)新たな行政課題への対応
まず、ウィズコロナ・アフターコロナを見据えた取組についてであります。
新型コロナウイルス感染症については、国において「2類相当」から季節性インフルエンザと同じ「5類」へ移行することが決定されました。
本市では、ウィズコロナ・アフターコロナを見据え、これまで培ってきた経験を活かしながら、引き続き感染拡大の防止を講じるとともに、市民生活・経済活動の歩みを止めることなく両立をさせ、各種施策に取り組んでまいります。
次に、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取組についてであります。
本市は、「誰もがデジタル化の恩恵を受けられる都市」を目指しております。
具体的には、デジタル技術を活用し、窓口で申請書に記載することなく、自宅からでも事前に申請ができる「書かない窓口」や、窓口予約・混雑状況を見える化する「待たない窓口」を導入し、来庁される市民の皆様の負担軽減を図るとともに、市役所及び地域行政センター窓口のキャッシュレス化にも取り組んでまいります。
また、対象者の状況に応じて必要な情報を提供できる「母子健康手帳アプリ」を導入し、子育て世代の育児に対する不安の解消や情報を迅速に発信できる環境を整備してまいります。
ICTを活用した子どもや高齢者の見守り支援の充実にも取り組みます。
子どもたちが安全で安心して登下校や生活ができるよう、地域で行っていただいている登下校時の見守り活動をデジタル技術で補完をし、事故や犯罪を未然に防止するため、子どもの見守りシステムを整備してまいります。
高齢者の見守りでは、人感センサーや緊急時通報機器の設置、認知症高齢者の方が行方不明になった際に、家族がスマートフォンのアプリで簡単に位置の検索ができるシステム、行方不明になった場合でも発見者や関係機関が早期に身元を確認できる環境などを整備いたします。
次に、GX(グリーントランスフォーメーション)の取組についてですが、本市は、令和3年2月に「ゼロカーボンシティ大野城」を宣言しました。そのゼロカーボンシティ大野城の実現に向けて、「市民総ぐるみでつくる希望あふれた脱炭素のまち」を目指してまいります。
その取組の一環として、まず、市域におけるCO2の排出が最も多い運輸部門のCO2排出量の削減から着手をいたします。次世代自動車のうち、CO2の排出量が特に少ない電気自動車(EV)、ハイブリッド自動車に外部充電機能を備えた、いわゆる、プラグインハイブリッド自動車、(PHV)、燃料電池自動車(FCV)やその充電機器の購入費用を補助する「次世代自動車普及促進補助金」を新たに創設いたします。
市役所の庁用車も、順次、次世代自動車に更新し、併せて庁用車を行政と市民が共同で利用する、カーシェアリングの導入も進めてまいります。
また、事業所の脱炭素経営に対する理解を深め、省エネ設備投資と生産性の向上を図り、地域経済の成長とCO2削減を同時に実現するため、省エネ最適化診断の受診支援にも取り組んでまいります。
(2)誰一人取り残さない包摂社会の実現に向けて
本市では、国が骨太の方針で示しております「誰一人取り残さない包摂社会」の実現に向けた取組も進めてまいります。
具体的には、妊娠・出産・子育てに関する切れ目のない支援としまして、「妊娠期から歯科に関する意識を高め、母子の口腔衛生の向上につなげるための妊産婦歯科健診」、また「聴覚障がいを早期発見し、早期療育につなげるための新生児聴覚検査」、また「産後に心身の不調や育児不安を抱える母子を対象に安心して子育てができる支援体制を確立するための産後ケア事業」を新たに実施をいたします。
また、不登校支援としまして、適応指導教室や訪問相談支援が難しい児童生徒に対し、オンラインを活用して、在宅での学びの機会の確保と規則正しい生活習慣を定着させていくための取組を始めてまいります。今後、児童生徒の状況に応じて、適応指導教室や訪問相談支援、オンライン学習支援を組み合わせながら、学びの機会の確保と社会的自立に向けた支援を行ってまいります。
認知症の方とその家族への支援としましては、法律・福祉の専門職や関係機関を構成委員とした成年後見運営協議会を新たに立ち上げ、対象者の状況に応じた支援方針や、成年後見制度市長申立ての検討、後見人の支援などを行い、適切な権利擁護につなげてまいります。
これら様々な取組を通して、誰もが住み慣れた地域で、安心してすこやかに暮らすことができるまちづくりを目指してまいります。
(3)次の50年に向かうまちづくり
次の50年に向かうまちづくりのスタートにあたっては、50年先、100年先を見据えた市政運営の基盤を整えるとともに、多様な課題に取り組んでまいります。
まず、大野城市の未来をデザインする取組についてであります。
現在、本市では平成31年度を初年度とする「第6次大野城市総合計画前期基本計画」に基づいた各種施策を進めております。令和5年度はこの計画の締めくくりの年であり、前期基本計画の進捗の確認や検証をしっかりと行い、新たな行政課題への対応や人口減少社会の中にあっても持続可能で選ばれるまちを目指し、次の時代に備えた後期基本計画を策定してまいります。
また、地域コミュニティを取り巻く環境は、少子高齢化や多様性の尊重、頻発する自然災害への対応など、抱える課題が複雑化・多様化する一方で、「新型コロナウイルス感染症」の影響により地域活動が制限されるなど、大きな転換期を迎えております。このような中にあっても、先人たちの願いや想いを大切にしながら、コミュニティ都市として次のステージに進むことができるよう、これまでの構想を更に深める「シン・コミュニティ構想」を策定してまいります。
次に、市民の命と暮らしを守る取組について申しあげます。
市民の命と暮らしを守ることは、市政運営の最重要の取組であり、これまで一貫して進めてまいりました。
いつか必ず起こることを想定し、地震や豪雨などへの災害対策に取り組んでまいります。
ハード面での整備については、急傾斜地崩落危険箇所の対策を引き続き実施をしてまいります。
また、河川整備につきましては、河川の断面が狭く、集中豪雨の際に水位が上昇する箇所があることから、地域住民の安全を確保するため、福岡県とともに御笠川の整備を促進してまいります。
併せて、近年、頻発している集中豪雨への備えとして、市内の浸水被害を軽減するため、大野城市雨水管理総合計画に基づき、引き続き浸水対策を進めてまいります。
さらに、農業用ため池の劣化状況や地震・豪雨への耐性を評価する「農業用ため池劣化状況等評価」を新たに実施します。
加えて、大規模災害が発生した際には、避難所となる公共施設には多くの市民が避難をすることになります。猛暑の時期や避難所生活が長期化する場合に備えるとともに、避難所生活での二次被害を防止するため、空調が整備されていないコミュニティセンターのふれあいホールと小中学校屋内運動場への空調設備の整備に着手をいたします。
災害対策には、日常からの備えや住民間、関係機関との密な連携が必要となります。引き続き、全世代参加型の市民総ぐるみ防災訓練を実施し、災害時の市民の防災対応力の向上と関係機関との連携強化に取り組んでまいります。併せて、自主防災組織や防災士連絡協議会の育成強化にも取り組んでまいります。
次に、人が集うにぎわいのまちづくりの取組についてであります。
昨年8月、西鉄天神大牟田線が高架化され、長年の課題でありました、交通渋滞の解消だけでなく、新しいにぎわいの創出など、本市は新たな一歩を踏み出しました。
高架下が本市のにぎわいの拠点となるよう、引き続き高架下や関係路線などの整備に取り組んでまいります。
また、本市には、自然豊かで魅力ある地域資源も多くあります。
本市を含む四王寺県民の森では、福岡県のワンヘルスの取組として、昨年11月には、ワンヘルスの森ミュージアムがオープンし、1月からは自然の中でワンヘルスを実感する体験ツアーが開催されるなど、様々な取組がなされています。
さらに、大野城総合公園、いわゆるまどかパークに隣接する「福岡自治研修センター」では、レストランの改修なども行われ、7月から「福岡県民をはじめ、どなたでも利用できる研修・学びの場」として、休日の宿泊も含め一般利用が開始されることとなっています。
これら、福岡県における「ワンヘルスの森」の整備や「福岡自治研修センター」の一般開放など、まどかパーク周辺の環境や人の流れが大きく変化していく状況を活性化のチャンスと捉え、福岡県と連携しながら、機を逸することなく、施設の相互利用や周辺整備、さらなるPRに努め、多くの方にお越しいただけるよう取り組んでまいります。
また、大野城いこいの森キャンプ場が、7月には開園30周年を迎えます。30周年を記念した様々なイベントの開催とともに、大野城いこいの森中央公園の大型遊具を改修するなど、皆様の憩いの場となるよう、さらに整備してまいります。
併せて、本市の豊かな自然環境を次の時代につないでいくため、長きにわたり市民トラスト運動を支えてこられた「公益財団法人おおのじょう緑のトラスト協会」とともに、広く市民の皆様に親しまれる里山の整備やトラスト活動の輪を拡げる取組も進めてまいります。
また、平成30年7月に開館しました「大野城心のふるさと館」も、7月に開館5周年を迎えることになります。特別展をはじめとした各種企画を通して、開館5周年を盛り上げ、更に市内外の多くの皆様にご来館いただけるよう、大野城市が持つ歴史遺産の広報活動にも取り組んでまいります。
これらの地域資源を活用し、「一般社団法人大野城市にぎわいづくり協議会」とも連携し、本市のさらなるにぎわいの創出を図ってまいります。
最後に、財政運営について申しあげます。社会保障費の増加や公共施設の老朽化に伴う財政支出など、今後の財政状況は厳しくなることが予測されます。
そのため、中長期の財政状況を見通しながら、公共施設等総合管理計画に基づく維持管理コスト抑制の取組をより一層進めるとともに、補助金や地方交付税措置のある市債を優先的に活用するなど、歳入歳出両面の取組を強化し、将来に負担を先送りしない健全な財政運営に努めてまいります。
以上、新年度における市政運営の基本的な考え方と施策の概要とともに、市政運営に取り組む私の所信の一端を申し述べさせていただきました。
3.結び
本市は、昨年4月1日に市制施行50周年を迎え、「オープニングセレモニー」を皮切りに、「下大利新駅舎プレオープン」、「まどかマルシェ」や「市制施行50周年記念式典」など、多くの記念事業を実施してまいりました。
歴史を刻むこれらのイベントにご協力、ご参加いただきました全ての皆様に、心から御礼を申しあげます。
来たる3月31日の「クロージングセレモニー」では、市制施行50周年の締めくくりとして、これまでの記念事業を振り返り、市民の皆様とともに作り上げてきた記念スライドショーの上映や記念曲の披露、プロジェクションマッピングなどのイベントを実施し、51年目への新たな一歩を踏み出してまいります。多数のご来場をお待ちいたしております。
50周年の様々な事業の実施にあたっては、市民や関係団体の皆様と職員が、共に悩み、共に議論し、共に汗をかき、共に感動を分かち合ってきました。
この、共に作り上げる「市民力」は、本市の誇るべき財産であります。
本市がこれまで市政運営の基軸としてきた「コミュニティによるまちづくり」の成果を、今回50周年で行った諸事業を通して、市内外に広く披露できたものと確信をしております。
市制51年目の新たなスタートにあたっては、「まちづくりは人づくり」、このことを、それぞれの立ち位置で確認し、これまで築き上げてきた「市民一人一人が輝く共働のまちづくり」を一層進化させてまいりたいと存じます。
市政運営におきましては、多様な課題に対して、限られた資源の中で、今やるべきもの、将来のために種をまくべきものなど、優先順位を見定め、本市の財産である、「市民力」と「職員力」を結集をして、迅速果敢に取り組んでまいる所存であります。
最後になりますが、今期で勇退される議員各位も居られるかと存じますが、長きにわたり大野城市の発展のために大所高所よりご指導賜り、この場をお借りしまして心から感謝を申しあげます。また、次期統一地方選挙にて立候補予定の皆様には、勝利を目指して、ご奮闘あられんことを心から祈念申しあげます。
市民の皆様方、そして議員各位におかれましては、今後とも市政運営全般にわたり、より一層のご支援、ご協力を賜りますよう、ここに重ねてお願い申しあげ、私の新年度に臨むにあたっての施政方針とさせていただきます。
注:令和5年度施政方針の全文は、下記ファイルで見ることができます。
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