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百本の傘(筒井)

 筒井村に住む庄屋さんは代々善六と名乗っていましたが、その三代目善六の時のお話です。

 早良郡の能古島(のこのしま)に辻の善九という長者がおりました。通称「ノコノゴケ」とも言われていましたが、ある年の梅の咲く頃、家族や召使い小作人など百人を連れて、日頃信仰している太宰府の天満宮にお参りに行き、帰りに筒井村庄屋善六の家に立ち寄りました。

 ちょうどお昼の時間で、善六さんの家では昼食をすませたばかりでしたが、仲のよい善九さんが家族まで連れて、久しぶりに訪ねてきてくれたのですから、昼食くらいは出さなければなりません。何しろ百人という大勢の人を連れておりますので、大ていの家では百人分のご飯を炊く大釜はなく、百人分の食器も揃わないで困ってしまうのですが、善六さんは少しもあわてず、大変喜んで即座に百人分の食事を作って歓待しました。

 しばらく二人の話ははずんでいましたが、そろそろ帰る時間となった頃、あいにく雨が降りはじめたのです。善九さんの一行は雨具の用意をしてきていないので、お供の人たちは大変困った顔をしていましたが、能古の長者善九さんともなると、さて善六さんはどうしてくれるかなといった顔で、すまして雨空を眺めています。善六さんもまたゆうゆうとしたもので、下男を呼んで物置の戸を開けさせ、「どうぞご自由にお使いください」と指した隅の方の棚には、百本の蛇の目の傘がきれいに並べられてありました。おかげで善九さんたちは雨に濡れすに、無事に能古島に帰り着くことができました。

 翌日はからりと雨もあがり、日本晴れの上天気です。昼過ぎ頃「ごめんください」という声に善六さんが玄関に出てみると、善九さんです。大男ばかり百人が揃いのはっぴを着て、片手に蛇の目の傘を一本ずつ持ち、片手に能古島名産の大きな鮑(あわび)を一個ずつ持ってきています。そして口々にお礼を言いながら、傘は物置に納め、鮑は台所に置いて帰って行きました。

 

 このことがあってから、両家は今までより一層親しくなり、いつまでも仲良く交際を続けたということです。

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