養蚕民具展を開いたときに、蚕を飼育しました。その蚕が繭を作り、蚕蛾(かいこが)となり、卵を産みました。平成21年4月7日に卵がふ化し始めたので、蚕が成長していく様子をこれから随時報告していきます。
卵
卵の直径は約1ミリです。白や黒、赤味を帯びた色をしています。
産卵された日と翌日の卵は淡い黄色をしています。翌々日から日を重ねるごとに卵色から淡いベージュ色、あずき色と色が濃くなります。
産卵されてから1週間くらいでねずみ色になり、気温が上がって桑の葉が成長し始める頃に卵がふ化します。

▲平成21年4月9日撮影
桑の成長
平成21年4月10日に撮影した桑の木です。やっと芽吹いてきました。
▲市役所敷地内に植えられている桑の木
毛蚕(けご)
蚕は自ら卵の殻を食い破って外にでます。
ふ化(産まれたてのこと)したばかりの蚕は、黒色をしていて、表面にびっしり毛が生えています。そのため毛蚕(けご)と呼ばれます。体長は2ミリほどです。
ふ化したら1齢幼虫となります。
▲平成21年4月9日撮影
毛蚕の写真をクローズアップしてみました。表面に黒い毛が生えているのがわかりますか?

▲平成21年4月9日撮影
掃立て(はきたて)
1齢幼虫に初めて桑の葉を与えることを、掃立てといいます。毛蚕を蚕座(さんざ:蚕を飼育するための場所のこと)に移す時、やわらかい羽箒(はぼうき)を使って、掃き下ろすことから、「掃立て」と呼ばれます。

▲羽箒を使って毛蚕を蚕座に移しています(平成21年4月9日撮影)
▲蚕は桑の葉を食べて育ちますが、また、桑の葉が芽吹いたばかりですので、
人工飼料で育てています。
▲桑の葉のペーストが練りこまれた人工飼料を薄くスライスし、
毛蚕に与えます。

▲人工飼料に毛蚕が群がっています。この餌を食べて大きくなります。
(平成21年4月9日撮影)
1齢幼虫の蚕は27~28度で飼育すると病気にかかりにくくなります。

▲平成21年4月11日撮影 体長約5ミリ
眠(みん)
蚕は1齢幼虫から3~4日で眠(みん:蚕が桑を食べるのをやめて脱皮のために、静止する時期またはそのようになった状態)に入ります。この時の眠を1眠と呼びます。桑の葉を食べるのをやめ動かなくなり、体が光っているように見えたら1眠と言われますが、実際はよくわかりません。しかし、毎日観察していると、もしかしたら今が眠かもしれない。という感覚がしてきます。1眠の状態から脱皮をするまでに約1日かかります。そうして2齢幼虫になります。2齢幼虫も27~28度で飼育します。

▲眠に入る前の蚕
(平成21年4月17日撮影 体長約8ミリ)

▲脱皮が終わった蚕
(平成21年4月17日撮影 体長約8ミリ)

▲脱皮後の抜け殻
(平成21年4月17日撮影 長さ約3ミリ)
給桑(きゅうそう)
桑の葉が茂ってきたので、人工飼料から桑の葉を与えるようにしました。蚕に桑の葉を与えることを給桑(きゅうそう)といいます。桑の葉は先端から3枚目くらいまでの柔らかい葉を摘みます。約5cmの長さの葉を2cm角くらいに細かくします。それらを蚕に与えると、それまで人工飼料に群がっていた蚕たちがいっせいに桑の葉に移動を始めました。しばらくすると人工飼料には1頭(蚕は古代中国では馬と同じくらい貴重価値が高いと考えられていたため、匹ではなく頭と数えられます。)も蚕がいなくなりました。

▲赤枠の葉を与えます。

▲摘んできた桑の葉

▲細かくした桑の葉

▲桑の葉を食べる蚕
(平成21年4月13日撮影 体長約5ミリ)
尻変(しりがえ)
毎朝桑の葉を摘んできて、新鮮な葉を与えます。朝露に濡れてしまった葉は、蚕が食べにくいので水分をよくふき取って与えます。1~2齢の蚕箱(かいこばこ:蚕を飼育するための箱)には、蚕が葉脈だけを残した桑の葉と小さな黒い粒々を見ることが出来ます。この黒い粒は糞(ふん)で、蚕が出した排泄物です。桑の葉や糞を残したままにしておくと、蚕が病気になったりするので、蚕箱は毎日掃除をして清潔に保たなければなりません。糞を取り除くことを尻変(しりがえ)と言います。新しい桑の葉を与えるときは、まず網をかぶせます。その上に新鮮な桑の葉を置くと、新鮮な桑の葉を求めて蚕が網目をかいくぐって登ってきます。しばらくすると、ほとんどの蚕が新しい桑の葉を食べ始めると、網状のものを持ち上げて、下に残った食べ残した桑の葉と糞が残ります。それらを捨てれば尻変の終了です。

▲給桑・尻変前の蚕の様子
(黒い粒々が蚕の糞)

▲尻変の準備(左:昨日の桑の葉が入った蚕箱、右:新鮮な桑の葉)

▲蚕箱に網をのせた状態

▲新鮮な桑の葉をのせた状態(桑の葉は15枚程度を細かくしています)

▲新鮮な桑の葉へ蚕が移動している様子

▲葉脈だけ残された桑の葉
桑の成長2
平成21年4月15日に撮影した桑の木です。桑の葉も成長してきました。


蚕の成長
蚕は脱皮を4回繰り返して繭になります。脱皮するたびに齢が変わり、1~5齢まで成長します。
|
齢と眠 |
日にち |
|
1齢 |
3~4日 |
|
1眠 |
1日 |
|
2齢 |
2~3日 |
|
2眠 |
1日 |
|
3齢 |
3~4日 |
|
3眠 |
1日 |
|
4齢 |
5~6日 |
|
4眠 |
2日 |
|
5齢 |
10~12日 |

▲脱皮後の抜け殻
(平成21年4月22日撮影 長さ約5ミリ)
蚕が繭を作るときは口から糸を吐き出しますが、幼虫の頃はお尻から糸のような白い繊維をだします。この正体が何であるか、まだつかめていませんが、今後わかれば報告します。

▲糸のような白い繊維質のものにくるまれた抜け殻の様子
蚕の雄(おす)と雌(めす)
下の写真を見て蚕の雄と雌がわかりますか?

蚕の雄と雌を区別する方法があります。
養蚕は二つの品種を掛け合わせた一代雑種(いちだいざっしゅ:英語ではハイブリットと呼びます)で蚕を育てます。遺伝的な構成が異なる二つの品種を交配させると、成長速度や大きさ、生存率、生産性などが両親の系統に比べて優れるということがわかっています(雑種強勢:ざっしゅきょうせい)。一代雑種で産まれた蚕は大きな繭をつくることから、より多くの生糸を取ることができます。このような方法は明治時代の終わりに始めて蚕で実用化されました。その後農作物などにも応用されています。
このように、生糸の生産性を上げるには、品種の異なる雄と雌が必要になるのですが、昔は繭(まゆ)を切って蛹(さなぎ)のときに雄と雌をわけるという作業をしなければなりませんでした。しかし、遺伝学の発展に伴い限性遺伝という方法が確立され、雌だけに特徴的な斑紋が出るように改良されました。(蚕はWとZの2種類の性染色体を持っていますが、雄がZZ、雌がWZと決まっているので、W染色体に別の染色体にあった遺伝子を組み込むと、雌だけにその特徴が現れるようになることを、限性遺伝といいます。)今飼育している蚕は2品種あります。白っぽいものと、黒い縞模様があるものです。

▲白っぽい蚕の雌
(平成21年4月24日撮影 体長1.6センチ)

▲白っぽい蚕の雄
(平成21年4月24日撮影 体長1.6センチ)

▲黒い縞模様のある蚕の雌
(赤丸は天敵に食べられないように蛇の目の斑紋があったころの名残とも言われている)
(平成21年4月24日撮影 体長1.7センチ)

▲黒い縞模様のある蚕の雄
(平成21年4月24日撮影 体長1.7センチ)
※このような斑紋は3齢幼虫の時にのみ見られるという報告もあるので、
今後どのように変化していくのか経過を追っていきたいと思います。
一代雑種どうしを交配させると、雑種弱勢という現象が起こります。今回飼育している蚕は一代雑種どうしを交配させた子どもたちを交配させた蚕なので、雑種弱勢が起こりました。下の写真を見てください。大きい蚕は1.4cmに成長したのに、一方は5mmしかありません。

▲平成21年4月12日撮影
これまで(平成21年4月24日)蚕を飼育してきて、蚕が7頭ほど死にました。小さい亡骸(なきがら)を見るととてもかわいそうです。蚕は家畜化された昆虫と呼ばれていて、ただ生糸を取るためだけに生かされているのです。

▲死んでしまった蚕
食欲旺盛な蚕
蚕が桑の葉を食べる様子を観察しているとかわいい場面に出会えます。お腹をすかせた蚕の上に桑の葉を乗せてしばらく様子を見ていると、蚕の顔が口元から見え始めます。蚕の体の中はほとんどが腸で占められているので、一日中食欲旺盛なのです。

▲餌を与える前の蚕の様子
(平成21年4月24日撮影)

▲餌を与えた様子

▲蚕の口が見えてきた様子

▲たくさんの蚕の頭が見えてきた様子

▲桑の葉が蚕によって虫食い状態になった様子
蚕が餌を食べる音
蚕が餌を食べる音は、雨が降っているような音と表現されます。蚕に餌を与えた後、蚕の様子を観察しているときに、一緒にいた人が「なにか音がしませんか?」と言いました。耳を近づけてよく聴いてみると、確かに蚕が餌を食べる音がしています。その日はたまたま成長したので、少し固い葉を与えてみたところでした。頭数も少ないですし、まだ3齢幼虫なので、小さな音ですが、録音に成功したので、聴いてみてください。
蚕が餌を食べる音 (mp3形式:1753KB )
少しノイズがありますが、蚕が餌を食べる音と聞き分けられますか?
給桑(きゅうそう)2
平成21年4月24日現在では、一度の給桑に長さ10センチほどの桑の葉を15枚与えています。3時間もするとほとんど食い尽くされています。ただし、これはやわらかい桑の葉を与えた時の話で、固い葉だとなかなか食が進まないようです。

▲餌を与えたばかりの様子

▲3時間後の様子

▲蚕が1~3齢の時に与えるやわらかい葉

▲3~5齢の時に与える硬い葉
昔話
蚕を飼育しているといろいろな人が声を掛けてくれます。ここ大野城市役所の敷地に蚕業試験場・繭検定所 が建っていた頃子どもだった人は、蚕業試験場や繭検定所で蚕をもらって家で飼っていた話や、病気だったり成長の遅い蚕を建物の裏に捨てていた(個人的な意見です)ので、そっともらって帰って飼っていた。など話をしてくれました。遠回りになるけど蚕が飼いたくて学校帰りに寄り道したこと、昔はおやつは自給自足だったので桑の実を食べてたことなど、いろいろな思い出を聞くことができました。

▲昭和39年4月14日に撮影した大野町役場の写真です。
当初は産業試験場の建物をそのまま役場として利用していました。

▲昭和53年に撮られた市庁舎の写真
民具を使ってみました
養蚕が盛んだった頃に実際に使われていた民具を使ってみました。下の写真は桑テボと呼ばれる民具です。桑の葉を摘んでくるときに使いました。肩にからうことができるように紐の付いたもののありますが、これにはついていません。この籠に桑をいっぱい摘んできて蚕に与えていました。

▲桑テボを使って桑の葉を摘んでいます。

下の写真は蚕箱という民具を桑給台(くわくれだい)に載せている様子です。養蚕家は蚕箱に蚕を入れて育ててました。昔はこの箱をたくさん棚に積んで、飼育していました。給桑(きゅうそう)や尻変(しりがえ)の時に、桑給台に蚕箱を載せて作業をしました。

桑の成長3
桑もずいぶん成長しました。


▲桑の木(平成21年4月27日撮影)
4齢になった蚕
平成21年4月26日に蚕の身体測定をしてみると、なんと3センチに成長していました。24日に測った時は1.7センチくらいだったのに、倍近くに育ちました。

▲大きさが分かるように定規を添えてみました。
(平成21年4月26日撮影 体長3センチ)

▲4齢になるときの脱皮した後の抜け殻
(平成21年4月26日撮影 長さ7ミリ)
このままうまく成長すると、ゴールデンウィーク明け頃に、繭を作り始めるかもしれません。
食欲が減ってきた蚕
あれだけ旺盛だった蚕の食欲が平成21年4月28日から急激に減りました。蚕の食糧として、桑の葉(長さ約15センチ)を1日20枚×4回与えていたのが、2回与えても余るくらいになりました。蚕が体調不良になったのかと思い、不安になりましが、5月2日になるとまた以前のような食欲に戻り一安心といったところでした。眠の時期は蚕の動きも鈍り上半身をゆらゆらゆらしているもの、また、体を横たえて本当に眠っているものなど、その様子は様々です。

▲横たわった状態の蚕(平成21年5月1日撮影)
この4日間は蚕が4眠に入った時期でした。食欲が戻ったとたん、蚕箱の中には脱皮後の抜け殻がたくさん見つかりました。1頭あたりの眠の時間は約1日ですが、400頭もいる蚕は産まれた時期も少しずつ異なるため、眠の時期にもずれがあったのでしょう。
蚕が脱皮したかどうかを見分ける方法があります。蚕の顔をよく見てください。脱皮する前の蚕はシャープな顔をしていますが、脱皮後は白く膨張した顔をしています。蚕は脱皮後すぐに餌を食べるようになるのではありません。しばらく上半身を持ち上げたままじっと、たまにゆらゆらしています。顔が少し黒っぽくなってくると餌を食べるようになります。

▲脱皮前の蚕(平成21年5月1日撮影)
蚕を毎日見ていると、脱皮する蚕がどれかわかるようになります。

▲脱皮中の蚕(平成21年5月1日撮影)
上の写真の蚕とは異なります。

▲脱皮後の蚕(平成21年5月1日撮影)
脱皮前の蚕と同じ蚕です。2時間席を外したうちに脱皮をしていました。
抜け殻が脱皮中の蚕の写真のようにジャバラ状になるものと、
上の写真のように綺麗な抜け殻になるものがあります。

▲脱皮直後の蚕の頭部(平成21年4月30日撮影)
今回蚕をじっくり観察していて眠の前後の違いがわかりましたが、3眠まではいつ眠に入ったのか、全くわかりませんでした。蚕は1~3齢までを稚蚕(ちさん)と呼び、4、5齢のものを壮蚕(そうさん)と言います。
蚕の形態
蚕の形態について説明します。

それぞれの部分に役割があります。例えば、胸肢は桑の葉を食べるときに掴み、尾肢は葉脈などをしっかり挟み体を固定します。腹肢は吸盤のように吸い付くことができます。

▲平成21年5月1日撮影

▲平成21年5月1日撮影
5齢幼虫になった蚕
蚕も5齢ともなるととても大きくなります。桑の葉も以前にもましてむしゃむしゃと食べるようになりました。

▲5齢幼虫の大きさ(平成21年5月6日撮影 体長7.5cm)

▲桑の葉を食べる様子(平成21年5月6日撮影)
5齢幼虫になると桑の葉の端から食べるようになります。
5齢幼虫が桑の葉を食べる音(MP3;3423KB)
桑の成長3
これまで蚕の成長に合わせて葉の硬さを選んできましたが、ここまで大きくなるとその必要もなくなります。枝ごと桑の葉を与えることを条桑育(じょうそういく)と言います。



▲桑給台(くわくれだい)と蚕箱で条桑育の様子を再現しました。


▲桑の木の成長(平成21年5月7日撮影)
この時期の蚕は細い葉脈などは食べてしまうほど、口も発達してきます。約10日間桑の葉をひたすら食べ続けます。しかし、夜中の2~3時に蚕箱を覗いてみると、餌を食べていない蚕がたくさん見られます。もしかしたら、蚕も夜は眠るのかもしれません。

▲桑の葉と蚕が食べ終わった状態。
蚕を飼う場所のことを蚕座(さんざ)と言います。蚕が幼い頃は体が小さいので適当な箱を使用していましたが、大きくなるにつれて面積を広げる必要があります。掃立時の面積を1とすると1齢の終わりで約10倍、2齢の終わりには約20倍、3齢末期には約40倍に広げるのが基準ということですが、今回は約100頭ずつ折り重なるように箱に入れて飼育しました。
糞を比較する
蚕が成長するに従って、食べる桑の葉の量が増えますが、それと同時に糞の大きさも大きくなります。

▲大きさの比較(平成21年5月1日の大きさで3~5mm程度)
繭を作り始めた蚕
5月5日から蚕が繭を作り始めました。口から糸を吐きだし、繭を作る前準備を始めます。そうすると蔟(まぶし)と言う繭を作るための場所へ移します。このことを上簇(じょうぞく)と言います。糸を吐き始めるようになった蚕を熟蚕(じゅくさん)と呼びます。

▲糸を吐きはじめた様子。(平成21年5月6日11次36分撮影)

▲糸を少しずつ吐いている様子(平成21年5月7日1時30分撮影)

▲最後の糞と水分が出ている様子(平成21年5月7日4時16分撮影)

▲繭の形が見えてきた様子(平成21年5月7日6時31分撮影)

▲繭つくりの途中で透かしてみた状態。

▲繭を作っている様子。

▲繭が完成した様子(平成21年5月7日13時18分撮影)
熟蚕を見分ける方法は2つあります。1つは蚕の体があめ色になり透き通ってきた蚕を見分ける方法です。 しかし、実際に蚕を400頭以上見ましたが、体が透き通ってきた蚕は10指に満たないくらいでした。それよりもよりわかりやすい見分け方を見つけました。それがお尻を見る方法です。
蚕は糸を吐く前に最後の糞をしますが、この糞はそれまでしていた糞とは種類が違います。それまでした糞は黒く、しばらくすると水分が抜けて若干小さくなります。しかし、色は黒いままです。ところが、繭を作り始める前の最後の糞は、色が緑色をしています。

▲繭を作る前に出す最後の緑色をした糞。

▲糞の色の比較(左:普通の糞、右:最後の糞)

それまでものも、したばかりのものを指で潰すと、中は緑色をしています。桑の葉しか食べていないので、糞も緑色なのです。

▲排出されたばかりの糞をつぶしてみた様子。緑色をしています。
しかし、なぜか表面は黒い色になってでてきます。また、最後の糞は最初は緑色をしていますが、その後日が経つにつれ茶色くなり、最後は白色へと色が抜けていきます。何か最後の糞だけ成分が違うのではないかと思われます。この最後の緑色をした糞が体内にある時に、蚕のお尻を見るとうっすら緑色をしています。繭を吐く前の蚕のお尻は黒っぽい色をしているので、これは明らかな違いです。

▲緑色の糞が透けている様子。

▲緑色をした糞がある様子。
繭を作ることが出来ない蚕
蚕は最初に繭を作るための土台となる足場を作ります。蚕が糸を吐くと表現していますが、実際は口から出た糸を蔟に貼り付けて、体内で作られた糸を引き出しているのです。上半身を大きく揺らして作った足場で、その後繭を作り始めます。
蚕にはうまく繭を作ることができるものと、そうでないものがいます。また、繭を作ることが出来ない蚕には大きく分けて2種類あります。1つは蚕自身の問題です。先ほど糞の話をしましたが、最後の糞をじょうずに排出できないと、糞詰まりになり糸を吐くことができません。2齢位の頃から尻変えの時に、蚕座紙(さんざし:蚕箱の下にしいておく紙。今回は薄用紙を使用しました。)に染みがあることがありました。この染みが一体何なのかわからずに飼育してきたのですが、繭を作る前になって大量の水を排出する蚕がいたことで、その染みの理由がわかりました。
繭を作る前の段階で大量の水分を排出している蚕を見つけたとき、そのお尻を触ってみると、硬いコロコロしたものがありました。糞詰まりを起こした蚕は、糞を排出しようと必死になって力むのでしょう。体内の水分が漏れ出てしまうのです。蚕が桑を相当量食べているにも関わらず、尿をするのを見たことがありません。桑の葉にも水分が含まれているはずなので、それらの水分は蚕の体内に貯蔵されているのです。蚕座紙に染みがある時は、人間で言うところの便秘気味の蚕がいるという証拠になると思われます。
最後までうまく糞ができなかった蚕は、体外に水分が流出し、体力を損耗して、繭を作ることなく蛹になってしまうと考えられます。

▲繭を作れなかった蚕の様子(平成21年5月9日撮影)

▲繭を作らないまま蛹になった蚕(平成21年5月9日撮影)
蛹になるために最後の脱皮をしています。右上部は抜け殻。

▲蛹になった様子(平成21年5月9日撮影)

▲繭を作った蚕の様子(平成21年5月10日撮影)
繭の中で蛹になった蚕と繭を作らなかった蚕の違いを
繭に穴をあけて調べてみましたが、特別な違いは見られませんでした。
また、この他の理由として1代雑種を交配して産まれた蚕なので、最初から繭を作る能力が劣っていることがあげられます。

▲蚕の大きさの比較(左:5齢幼虫、右:雑種弱勢)
次に、繭を作れない蚕が存在するもう1つは人為的な問題です。
蚕が糸を吐き始めた土台の段階で蔟へ移動させることができればいいのですが、発見が遅れて繭の形が見えてきた頃にあわてて蔟へ移動させると、その後自分が作った繭を抜け出そうともがき始めます。この時、うまく抜け出せればいいのですが、自分が吐いた糸で自分の体を締め付けて死んでしまう蚕もいます。また、抜け出した後、なかなか繭を吐く場所を見つけることが出来ずに、さまよい続ける蚕もいます。他の蚕が吐き出した糸と一緒に蔟へ入れると安心するのか、繭を作り始めることがわかりましたが、そのことが分かる前の蚕は繭を作らないまま蛹になってしまうものもいました。

▲繭を作る場所を探してさまよう蚕(平成21年5月9日撮影)
他の蚕がいる蔟(まぶし)へ入っていこうしている様子。
蔟に移す時期が遅いと、蚕が繭を作ることを止めてしまったり、また、繭を作るのには体力がいるのでしょう。ある程度繭を形作った後では、新たに繭を作る体力が残っていないのかもしれません。
また逆に蔟に移す時期が早すぎても蚕は繭を作りません。蚕は5齢になるととにかく餌を食べ続けるのですが、お尻がほんのり緑色をしてきたところで蔟に移してしまうと、繭を作るための体力がついていないのでしょうか。繭を作らなくなってしまいます。
上簇は遅すぎても早すぎてもうまく繭を作らないので、難しい作業といえます。
今回約400頭蚕を飼育しましたが、繭を作ることなく死んでしまったのは0.1%ほどでした。

▲自分の吐いた糸が体に巻き付いて死んでしまった蚕(平成21年5月11日撮影)
また、今回蔟のサイズを蚕の大きさに合わせて4cm×4cmとしました。しかし、蚕は狭いところが好きなのでしょうか。蔟の隅を選んで繭を作っていました。

桑の成長4
桑は大変生命力の強い樹木です。蚕の餌用に一日60本以上の茎を採集しても、また新しい芽を出して、どんどん成長します。大野城市役所の敷地に残された1本の桑の木は、昭和31年まであった蚕業試験場・繭検定所の足跡を示したものですが、現在は非常に大きく成長していますが、当時は桑の葉を採取しやすいように1m50cmくらいに切りそろえられていました。ここ大野城市役所周辺も広い桑畑で、現在の60~80歳くらいの方にお話をうかがうと、小学校の帰り道、遠回りになっても桑の実がなるころは寄り道して、おやつとして桑の実を食べていたと言います。その後、家路につこうとしても、あまりに桑畑が広すぎて、右も左もわからなくなってしまい、まるで巨大迷路に迷い込んだようだった。と言われました。桑の木は1m50cmくらいの背丈でも、葉が上に上に伸びていく木なので、小学生が背伸びをしても回りが見渡せないくらいだったのでしょう。


▲桑の木(平成21年5月14日撮影)
桑の雄と雌
桑の木は風媒花(ふうばいか)と呼ばれ、花粉を風の力で雌しべに飛ばし、受粉する植物です。ですから、桑には、雄株と雌株があります。市役所の敷地に生えているのは雄株なので、実がつきません。雄株の特徴としては春先(4月上旬)、新芽がでるころに緑色の房状の尾状花序(おじょうかじょ)をぶら下げます。この花序にはたくさんの雄しべの葯(やく)を見ることができます。この葯から花粉を飛ばします。花粉は小型でたくさん作られるので、非常に飛びやすく、数百m以上離れた雌しべにも受粉することができるといいます。そうして、うまく受粉できた雌株には5月の上旬になると、紫色をした実がなります。風媒花植物は花は美しくなく、いい香りや蜜の分泌もありません。それは昆虫などを媒介として受粉する仕組みではないからです。

▲桑の雌株(平成21年5月19日撮影:九州大学箱崎キャンパスにて)

▲たわわに実る桑の実

▲黒っぽい実が熟した実(平成21年5月19日撮影)

▲採取した桑の実
桑の実を食べてみました。最初は青臭い感じの味がして、決して美味しいものではありません。しかし、最後に酸味のあるベリー系の味がして、あとくちは悪くありませんでした。
これからも成長する“蚕”
さあ、これからこの蚕はどう成長していくのでしょうか?
成長の様子を随時更新していきますので、楽しみにしていてください。
問い合わせ先
電話 092-580-1918
ファクス 092-573-7791
メールアドレス furusato@city.onojo.fukuoka.jp
場所 市役所 新館3階〔〒816-8510 大野城市曙町二丁目2-1〕











